在学生インタビューシリーズ①

2022年度 フリンジ 12夜 総監督 吉田真夕さん、中島和奏さん、西村阿実さん 

独自性のある演出の冴えた2022年度のフリンジ上級生演目『十二夜』の総監督3名に、異学年が協力して創造性あふれる作品を完成させていく醍醐味について聞きました。

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2023年 3月13日 在学生インタビュー: 清泉フリンジ・フェスティバル上級生演目

2022年度 Twelfth Night 総監督(中島和奏さん 西村阿実さん 吉田真夕さん)


司会:今年のフリンジもとても感動的でした。どんな感じで企画して行ったのですか?

中島:もともとコロナで、毎年やっていることがちがったので、今年は、どんどん伝統を壊

   していこう、とひとりひとりが思っていたところがありました。何か、新しいことを

   しよう、と。

司会:みなさんは、2年生の時が、本館を使った映像の『ロミオとジュリエット』で、3年

   生の時が、『恋の骨折り損』そして、4年で『十二夜』でしたね。

中島:『ロミオとジュリエット』は無観客でしたので。

司会:そうでしたね。観客のリアクションがない、というのは、結構辛いですよね。で、久

   しぶりに講堂にいっぱいの観客を入れての『十二夜』でしたが、嵐の難波のシーンが

   パントマイムだったり、ライティングを使った演出など、とても演出が工夫されてい

   ましたね。

吉田:最後のシーンは自分たちで考えた、これまでにない、フリンジのオリジナルでした。

司会:あの傘のシーンはすごく感動的でした。

吉田:本当ですか!あれは、4年生だけが出演している場面なんです。物語の最後を同期全

員で締めくくることができて思い出に残るシーンになりました。

司会:フェステの歌もオリジナル曲で、歌唱もうまくて、音響面でも、すごくいい作品でし

   たね。劇中、偽のラブレターで騙されて忠誠心から恋心に転じるマルヴォーリオをマ

   ルヴォーリアという女性にしたことには何か意味があったのですか?

吉田:実は、マルヴォ―リオの性別を逆転させるという演出は2017年に上演されたNTL

版(ナショナルシアターライブ)でも行われています。フリンジ公演のテーマが「多

様な愛」だったので、主軸の男装の女性が男性の主人に恋をしたり男装の女性を男

性と思って女性が恋をしたりするだけでなく、女主人に忠実な女性の執事が同性で

ある女主人に恋をする、という構図を作りました。マルヴォ―リオの性別の逆転は、

本来の異性愛の設定にはないメッセージ性があり、やはり女子大で上演する上でも、

それは意味のあることではないかとみんなで話し合う中で自然に決まりました。

司会:感心したのは、そのことを、劇中のほかの人物たちが、みな、自然なこと、として受

   け入れていたことですね。身分違いの愛であることを揶揄されても、ジェンダーの

   ステレオタイプはない、という描き方がとても現代的で斬新です。500年以上前の

   セリフを使っているのに、今を生きるみなさんの感性があふれていて、こんなに「今」

   が際立っているということにとても感動しました。

    英語でシェイクスピア作品を上演する、なんて、できるかしら?と思っている1年

    生にメッセージはありますか?

吉田: 私は中高を通して、合唱部に所属し文化祭では毎年ミュージカルを上演していたの

ですが、校内にあるESS(英語演劇部)は毎回英語で劇をしていて、すごいな、自

分には英語劇なんてできそうにないと思っていました。しかし、上級生のフリンジ

上演を見た時に言葉を超えて伝わってくるエネルギーに圧倒されまして。公演を通

して突き動かされる情熱があれば、それを伝えたいという気持ちだけで、結構成立

してしまうのだなと実感しました。もし、フリンジに入るか迷っている人が居れば

恐れずに、そして実際の公演を見て心が動くままに始めてみるのもよいと思います。

西村: 私は逆で、中・高がESSで、別にミュージカルをやっている部活もあって、そち

    らはコーチの先生も厳しく、本格的でしたが、ESSは小さい規模でアットホームに

    やっていました。清泉に来て、1年生の時には、上級生公演が、歌あり、踊りあり、

    照明あり、のすごい規模で、「スケール大きすぎ!」とびっくりしたし、公演中、

同じパーカーを着た先輩たちが「ヒューヒュー」と熱心に声援しているのを見ると、

ちょっぴり気おくれしました。でもなんとなく直観的に楽しそうで、始めてみたら

    すごく楽しかったので、ちょっとでも興味があったら、お試しで始めてみるのも

    オススメです。授業なので、2年だけでやめることもOKですし、でも、きっ 

    と素敵な仲間ができて、充実してすごせるので、ぜひ試してみてください。

中島: 私はこれまで舞台に立った経験がなくて、そこは一番不安に思ったところですが、

    思い切って参加してみて、私は、まず、シェイクスピアの古典の世界の奥深さに

   惹きこまれました。洋楽がすごく好きなので、「韻をふむ」オリジンに出会えた感じ

   で、戯曲に散りばめられた、そういう奥行きのある世界を、ちゃんと教えてもらい

   ながら、自分の感性を磨ける。歴代の先輩が「フリンジが大学に行く理由になる」

   と口々に言っていましたが、みんなモチベーションが高くて、互いに高め合える環境

   が本当に充実していました。

司会: 最初からモチベーションの高い人が集まったわけではなくて、最初はなん

    となく興味があって参加しても、信頼しあえるピアの中で、自分が何をやりたい

    か、ということを出し合って、自分を解放できるから、そういうやりがいを感じる

    中で愛するようになる、というわけですね。

司会:たった一夜の一期一会のために、完全燃焼するみなさんの姿に、いつも教員は

   プロの公演よりも感動して泣いてしまうのですが、あの、たった一度の本番に向かっ

   ていく団結力はすごいですよね。今年はどのくらいの人数のプロダクションだった

   のですか?

中島:39人です。

司会:39人もいたんだ! まとめるのが大変ではなかったですか?

中島:半分の18人が4年生でした。

司会:なるほど。経験の豊かな世代が厚かったのですね。

西村: 3年生も熱心で、留学に行く子も、出発直前までオーディションや練習に参加して

   くれたりしました。

司会: 留学も行きたいけど、フリンジもやりたい。みんな悩みますよね。

授業の中で、学生一人ひとりが創造性を発揮できるってすてきなことですよね。普

    通は、授業でやる、というと、「やらされ感」が出そうなものじゃないですか。み

    なさんを見ていると、そういう「やらされ感」がない。それは、やっぱり先輩の牽

    引力があるからでしょうか。

中島:作品に対する覚悟というのは、それぞれが、2年、3年の公演を通してできていくも

   のなんですが、でも、先生から教わるだけじゃなくて、先輩が本気で打ち込んでいる

   姿を見ると、そこから学べるし、あこがれ、というか、すごくカッコいいんですよね。自分もそうなりたい、と言う気持ちが自然に湧いてくる。

司会: 清泉って、ピアの結びつきの強い大学のように感じます。ずっと代々、上の

    先輩が、後輩を気遣って面倒みてくれて、だから、自分が先輩になったらそれを継

    承する。すごく信頼関係ができていて、互いに安心できる環境があるんですね。

中島:正直、高校までの部活では、縦の関係は全く築けなかったので、大学に来て、4年に

   もなると、もう、後輩が可愛くて、可愛くて、どうしようもない、という、この感じ

   は初めて体験しました。今日も、このあと、今度の総監督3人と会うんですよ。

司会:おお、今日、卒業式の二日前ですが、継承されていくのですね。

中島:一緒のシーンをやっていると、自然に交流が濃くなって、それで異学年とも関係性が

   深まっていきます。

司会:長い時間を共に過ごした同志という結束感ですね。

西村:私は小さいところにいる方が自分には向いているような気がしていたんですが、コロ

   ナになってから、人ともっと関わりたい、という気持ちが芽生えてきて、それで、こ

   ういう大きなプロジェクトをいくつも経験する中で、今年のテーマでもある「愛」と

   いう大きなものに、フリンジに入って触れることができたな、と思いました。そうい

   う環境に学生時代に出会えたことがすごく大きかったから、人と人との関わりを楽

   しめるようになって、お互いのいい部分を見つけることができるようになったこと

   は、自分の成長にもなったと思います。

司会:清泉は人文学の大学で、つまり、人間って何か、ということを探求するのが人文学で

   すが、「愛」という表層的にも使われる言葉の記号の向こう側にはすごく豊かで深いものがあったりして、おっしゃっているのは、そういうものに触れることなのかな、

   と思います。でも、そういうことって、経験できた時には、ああ、なんか、生きてい

   る真髄にふれた、というような感じがしますものね。

西村:はい。学校くるのが単純にたのしいな、と思えて。

司会:そこですよね。やらされ感がある時には、何か不利になるといやだから、仕方がなく

   やる、ということだけど、「楽しいからやる」って一番大事なことですよね。

吉田:私は、4年になって、後輩に「教える」経験を通して一番自分が学んだ気がします。

   それまでは先輩の背中を追いかけていた、という感じだったのが、今年演出だったの

   で、演技指導もあって、演技って、その人の持っている感性もあって、正解がないも

   のなので、教えながら、ああ、自分はこう思っていたのか、と確認できたりして。

司会:なるほど。やっぱり、フリンジは異学年が一緒に活動することが、一番うまく行って

   いる原動力かもしれませんね。上下関係はなくて、みな同じ出演者として協働しなが

   ら、蓄積のある先輩が、それを親愛の情をこめてシェアしていき、もっとよくしたい、という同じ思いの中で、それをどんどん吸収しようとする後輩がいて、という関係性

   が、とても暖かで有機的な信頼関係を構築できるのかもしれませんね。

   今日は貴重なお話をありがとうございました!

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